Tyranny of majority(熊谷 晶子)

トクヴィルは民主主義の欠点として「多数者の専制権力(tyranny of majority)」を指摘している。彼は「多数者の支配が絶対的であるということが、民主的政治の本質」であるといい、多数者の前には何者も無力で、少数派の声に耳を傾ける余裕も感じられないような事態は危険だと忠告している。世論が多数者を作り出す。立法団体も多数者を代表してこれに盲従している。執行権力も多数者によって任命される。警察は武装した多数者であり、陪臣は逮捕を先刻する権利を与えられている多数者、さらに判事たち自身も一部の州では多数者によって選ばれているという状況では、少数派は不条理に遭遇しても誰にも訴えられない。実際トクヴィルはこのような「圧制」が頻繁にアメリカで行われていたといっているのではなく、そのような「圧制」を防止する保障がないことを危険視していた。